CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~

Appearance of the natural enemy

ジムに行く前、スタイリストから篤人の痕跡を消す作業が行われ、ランニングマシーンで汗を流し、いつものようにプールでひと泳ぎを済ませると、いきな背後からりフラッシュを浴びた

そう‥‥

あの桜井蒼紫がやって来たのだ


【あれから、吉岡とどうなったんだ?】


振り返る私に、挨拶代わりに篤人の事を聞いてくる桜井は、知ってるとばかりに口角を上げて笑みを浮かべている

勿論、そんな質問に答えるつもりは毛頭ない

桜井の存在を無視した私は、濡れた身体をバスタオルで拭きながら着替える為にロッカールームへと向かった

やっぱり来た

どうも彼は苦手だ

世界の歌姫

RURIと言う名が世界中に響き渡ると、私の取り巻く環境は大きく変わり、誰もが私に諂うようになった

勿論、事務所の人間は変わりなく接して来るけど、自分でさえ満足さえ出来ない歌でさえ絶賛して来るし、やたら褒め讃えてはチヤホヤするばかり

そんな環境が良いとは言えないけど、桜井蒼紫の毒舌と傲慢な態度は私を苛付かせる

素の私をカメラに収めるのが彼の仕事なのは分かってるけど、モデルから歌手へと転向した私は、向けられるカメラに素の自分を曝す事は長い事出来てない

東洋の美女

モデル時代、そんなコンセプトで売り出された私は笑顔すら封印されていた

それが歌手になり笑顔を向ける事も多くなったけど、カメラの前で封印されていた笑顔を引き出すのは難しく、いつしか作り笑いが定着してしまった

しかし桜井蒼紫は作り笑いをしている私を見破り、甘ちゃんだと罵ったのだ

向上心がない

今のままでは何れ消える

闘争心の欠片もない

そう言った彼の言葉に返す言葉すらなく、ただ怒りだけが込み上げてきた

そんな私の表情を良い顔だと言った

何処が?

そう言いたかった

こんな怒りを露わにした自分なんて自分らしくない

でも彼からもらった私の写真は、今までの私とは違う表情をしていたのも事実で、だからこそ彼と深く関わるのが怖いって気持ちもある

はぁ~

思わず大きな溜め息が何度も漏れてしまう

そして着替えの終わった私を桜井はカメラのレンズを向けて待っていたのだった


カシャカシャッ

【いきなり撮らないでよ!!】

【はぁあ?
 いきなり撮るから、お前の素の素顔を撮れるんだろうが!!
 なぁ~、お前‥‥】


上から下まで見下ろす桜井蒼紫

全てを見透かされそうで、私は逃げるように歩き出した


【お前、女になっただろう?】

【はぁあ?
 も、もともと女だけど?】


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