CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
周囲の声を遮断するように、耳にはイヤホンをして音楽を流しながら、いつものメニューを淡々と熟す

そんな事をしていると、いつしか吐き気すら収まっていた

そして水着に着替え、最初は平泳ぎをして身体を慣らしていた私だが、本格的にクロールに変えて泳ぐ頃には頭の痛さも消え、ヘトヘトになるくらい泳ぎまくり、プールから上がった私の足は疲れからかカタカタと笑ってしまうくらい震えていた


【酔っ払い
 二日酔いは治ったのか?】


シャワーを浴び、着替え終わった私を待ち構えていたかのように現れた桜井蒼紫

私は自然と顔が強張り、彼を相手にしたくないとばかりに無視して通り過ぎようとした

しかし、そんな私を桜井が許す訳がない

強く掴まれた腕

私の行く先を阻む大きな身体

向かられる視線

しかし私は桜井の顔を見る事もなく、掴まれた腕を振り払うように腕を動かすが、男の力は私が思っている以上に強くて振り払えない


「‥‥って」

「あ″?」

「放してって言ってるのが聞こえない?」

「嫌だと言ったら?」


日本語は禁止って言われていたのに、私が思わず咄嗟に出た言葉は日本語だった

しかも、桜井は嫌だとか言っている

だから思わず大きな溜め息を吐き出してしまった

何で、こんな男に物欲なんてないとか言ってしまったんだろう?

どう見られたって構わないのに‥‥

私が篤人に強請った

そう思われても良かったのに‥‥

なんで否定するよな事を言ってしまったんだろう?

自分が自分で嫌になる

恋多き女

そうメディアでは言われてる私だ

真相なんて、誰も分かってくれない

分かろうとしてくれない

でも、篤人は偏見で私を見る事はなかった

普通に話してくれたし、偽りが多い世界で篤人の言葉は真実を語ってくれた

だから私も篤人の前では普通の女の子でいたかった

誰に、どう評価されようが気にもしない私だったのに、酔っぱらっていたとは言え、何で桜井に否定するような言葉を言ってしまったのか分からない

嫌いな男なのに‥‥


【お前の事、ますます気に入ったよ】

【どうでも良い
 私は、あなたが嫌い
 仕事以外で、私に構わないで!!】

【吉岡篤人ねぇ~
 お前、吉岡に抱かれた痕跡を消し忘れてるぞ!!】


えっ?

私は桜井の言葉を聞いて、思わず持っていたタオルで首や胸元を隠した

そう言えば、消す事すらしないまま部屋を出てしまったんだった

しかも桜井に見られるなんて‥‥

でも、別にやましい事なんてない

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