CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
対談で話しただけでは、仲良くなったとは言えない

ましてや、彼から連絡先を聞かれた訳でもない

サッカー観戦した事がないって私が言ったから、吉岡さんはチケットをくれただけで、社交辞令にすぎない

自分でも分かっているのだけど、改めて人から言われると胸がチクチクと痛む

今迄、数多くの人からコンサートや舞台などの誘いを受けたし、仕事だからと出向く事も多かった

今回の事だって、それと同じ

同じなのだ!!

でも‥‥

私は吉岡さんとの対談で、いつもと何かが違うって感じた

初対面の人と話すのは緊張するし、それでも与えられた仕事はこなさなければならないし、あくまで仕事相手として話していた

しかし吉岡さんとの話は純粋に楽しかったし、時間があっと言う間に過ぎてしまい、もっと話したいって思ったのは初めての事だった

それに限られた時間だったけど、自分の事も沢山話せたのは吉岡さん以外にはいなかった

また会いたい

そう思えたのも、彼しかいなかったのだ

だけど、それを感じたのは私だけだったのかもしれない

彼は私に何も感じなかったのかもしれないし、そう思うと何だか複雑な心境になってしまい、果たして選手控室へと行っても良いものかと躊躇してしまったのだった


「瑠璃?」

「えっ?」

「どうかした?」


俯き立ち止まったまま動き出さない私に、優希が話しかけてきた


「迷惑じゃないのかな?
 菜摘は友達かもしれないけど、雑誌の対談で一緒になったからって押し掛けるのは、吉岡さんの迷惑になるんじゃないかって思って‥‥」

「ん~
 確かに、その気持ちは分かるよ
 でも、もし仮に彼から迷惑だと感じたら、挨拶だけして帰れば良いんじゃない?」


吉岡さんから迷惑だと感じたら‥‥

もし迷惑だって感じたら、私は‥‥


「恋しちゃった?」

「えっ?」


恋?

いきなり優希の口から恋なんて出て、私は驚いたように優希を見つめたのだった


「そ、そんなんじゃ‥‥」


そんなんじゃないっと言いかけた言葉だったが、真っ直ぐ見つめる優希の顔を見たら、私は小さく頷いてしまったのだった


「そっかぁ~」

「あっ!!
 でも、まだ自分でも良く分からないよ
 ただ迷惑がられてたら嫌だなぁ~とか、そう思うと胸がチクチク痛むって言うか‥‥
 こう言う気持ちが恋なのかな?」


ひやかすような言い方とかじゃなく、ありのまま受け止めてくれる優希の態度に、私は自分が思ってる事を素直に口にする事が出来たのだった


「少なくても、好意を持ってるって事なんじゃない?
 その気持ちを大切に育んだら恋が実かもよ」

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