CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
そう言えば‥‥

吉岡さんは私の歌が好きで、試合が始まる前や終わった後に聴いてると言ってくれたが、集まってサインを強請って来てる選手とは違って、私にサインをしてくれと言わなかった

どうして?

ファンじゃないから?

ん~

何でだろうって思いながら、目で吉岡さんの姿を探してみる

あっ!!

居た!!

首にタオルを掛け、ベンチに座りながら中園選手とイヤホンを共有させて、吉岡さんが手にしてるiPodで音楽を聴きながら2人で話し込んでいる

なんて言うか、私達が控室に来たって事で、これだけの騒ぎになってるにも関わらず、自分達には関係ないって言う態度に悲しくなってしまった

出来る事なら、吉岡さんが聴いてるiPadを奪い、本当に私の歌を聴いているのか確かめたいくらいの心境だ

だけど、そんな事が出来る訳がない


「俺の携帯でもRIRIと一緒のところを撮ってや!!」


そんな声に、誰だか知らない人に肩を抱かれながら、それでも私は作り笑いを浮べたのだった

見知らぬ人に肩を抱かれる

時にはハグをする人もいる

相手が一般人であれば、私に付いているSPが私自身に近寄らせる事はないが、それ以外は作り笑いをしながら堪えなければならないのだ

どの位の時間が経過したのだろうか‥‥

菜摘が私の紹介をしてから、ずっと携帯を向けられ写真を撮られている

しかし、それでも私は疲れた様子など見せずに、プロ根性として心では早く終われと願いながら、けして笑みを忘れなかったのだった


「おいっ!!
 もう一緒に撮ってない奴はいねぇ~か?
 って、ヨッシーと万里!!
 お前等は撮らせてもらってねぇ~だろう?
 早くしてやれよ
 RURIさんだって疲れちまうだろ!!」

「わ、私なら大丈夫ですよ
 それに、無理して写真なんて撮らなくても‥‥」

「何を言ってるんですか!!
 世界の歌姫ですよ
 一緒に撮りたがらない奴なんで居ないですから!!」


随分と偉そうに言いながらも、私を気遣ってくれる優しさと強引さに、私はちょっと戸惑ってしまった

ちょっと生真面目って感じの選手は、明らかに私よりは年上だろうと思う

元々輪の中に居るのではなく、自分の世界みたいなのに入っていた吉岡さんと中園さん

その2人に、生真面目な優等生って感じの選手が吉岡さん達に声を掛けるもんだから、私は困惑してしまう

だって、なんだか無理やりっぽくて‥‥

それに、そんな言い方したら絶対に撮らなきゃダメみたいに聞こえるし、そんな事を私は望んでいない


「アツ‥‥
 俺が撮ってやるよ!!」


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