CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
中園さんに背中を押され、吉岡さんが私の目の前に立った

どうしよう‥‥

一瞬‥‥

そんな事を思ったけど、無理やり来ただけだもんねって考え直し、私は営業スマイルで吉岡さんと写真を撮ったのだった


「瑠璃に吉岡さん‥‥
 こっちの方も向いて!!」


えっ‥‥

いつの間に‥‥

向けられてるカメラの後方に、優希が携帯を片手に手を振って叫んでいる

そんな事をしなくて良いのにって思いながらも、中園さんに向けた笑顔と同じ様に優希に向けても笑顔を作った私

そして携帯のカメラで撮った写真を優希に見せられたのだが、そこには完全に営業スマイルを作った私が映っている

転送するねって言われたけど、作り笑いの写真なんて持っていても意味がない

しかも吉岡さんは笑ってなかった

まぁ~

彼はサッカー選手なんだし、カメラを向けられても作り笑いなんて出来ないだろう

それは仕方がないとして、一人でカメラに向かって笑ってる写真って滑稽に思えてならない

私を取り囲むファンは、誰もが私と写真を撮りたがっているし、一緒に写真撮影なんて出来たら、そりゃ~もう舞い上がるようにはしゃぎ、こっちが頼まなくても笑顔を浮べてくれるのだ

だから私も向けられたカメラには、例えどんなに体調が悪かろうと笑顔を作る事にしている

それにしても、さっきまで一緒に撮影を頼んで来たサッカー選手の人達だって、私との写真撮影には笑顔だったり、バカっぽいポーズをしたりしていたのに対して、吉岡さんだけが笑顔がなかった

もしかして、対談の時に何かやらかしてしまったのだろうか?

そんな不安が脳裏に浮かんだが、自分が何をしてしまったか思い出せない

でも、きっと私は何かやらかしてしまったに違いない

そう思うと、ますます凹んでしまう自分が居たのだった

ダメだ

こんなの私らしくない!!

アメリカでChanceを捕まえただって、私がNegativeにねらずChallenge精神とPositiveさで掴み取り、今の地位を築き上げたのだ


吉岡さんの気持ちが私にないと分かったなら、いつまでもマイナス思考に考える事はない

はぁ~

私は優希から転送された吉岡さんとのツゥーショットの写メを見ながら、小さな溜め息を吐き出して鞄の中に携帯を投げ込んだのだった


「そろそろ、失礼しない?
 皆さんお疲れだろうしね‥‥」

「そうだね♪
 そうしよう!!」


絶対に、まだ居たいって言うと思った菜摘が、やけに私の言葉を素直に受け入れた

それは、それで拍子抜けしてしまう


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