CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
私の隣で聞こえるか聞こえないかってくらい、本当に小さな声で呟くように言った優希

優希の怒りは、まだ静まってはいないようだ


「私は‥‥
 2人が、まだ私を友達だって思ってくれていたって事が嬉しいよ」


私はギュッと握り拳をしている優希の手に自分の手を乗せ、小さな声で返事をしながら、優希に笑顔を見せたのだった


「ったく‥‥
 瑠璃は変わってないね!!
 世界的に有名人になったのに、人を素直に信じちゃうんだもん
 菜摘は、確かに瑠璃を友達だと思ってるだろうけど、ある意味利用してるんだよ!!
 それでも、菜摘を許しちゃうんだから‥‥」

「利用かぁ~
 もし、そうであっても、そうじゃなくても私には関係ない
 だって私にとって優希達は、友達って言う私の宝物だからね♪
 もう二度と失いたくない
 それだけだよ!!」

「宝物ねぇ~
 確かに、友達は宝物だよね‥‥」


ちょっと呆れ顔を見せていた優希だったが、私の言った宝物って言葉に、やっといつもの優しい笑顔を見せてくれたのだった

そして運ばれて来た生ビールのジョッキが全員に行き渡ると、キャプテンコールが部屋に響き渡り、長谷川さんって人の乾杯の掛け声で食事会がスタートした

そう言えば、選手控室で生真面目な優等生って思っていた人がキャプテンだったんだなぁ~って思いながら、私は一口だけビールを口に含み、直ぐに烏龍茶のグラスを手に取った


「あっ!!
 僕も烏龍茶をもらっていいっすか?」

「えっ?」


いきなり‥‥

本当に、いきなりの事だった

まさか吉岡さんから話し掛けられるとは思ってなかった私は、思わず驚いて固まってしまったのだ

思わぬ失態‥‥

烏龍茶だよね?

烏龍茶‥‥

そう思い、慌ててグラスに氷を入れて烏龍茶を注ぐ


「アツは、あまり酒を飲まないんだよ」


不意に声を掛けてきたのは、ゴールキーパだと言う島田さんだった

確かに、吉岡さん以外はビールの飲みっぷりは豪快で、早くもお代わりしているくらいのスピードだ

しかも和牛を焼き初めてガツガツと食べながらも、私の空いている皿にお肉を乗せてくれていた

誰がお肉を入れてくられたのだろう?

そう思いながら、吉岡さんに烏龍茶のグラスを手渡したのだが、流石スポーツ選手って言うか男の子だけあって、食べる速度が速くて呆気にとられてしまう

すると、島田さんが仕切りやなのか知らないが、飲みながら焼き肉を焼いてくれている

あぁ~

彼がお皿にお肉を入れてくれているんだぁ~

鍋奉行ならぬ、焼き肉奉行って感じで次々と島田さんがお皿に乗せるもんだから、ついていけない私



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