CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~
海外で行われる試合も、練習やミーティングなどに追われ限られた数時間しか会えないと言っていた

その篤人の数時間と、私の時間が重なるのは難しいと思う

世界中から出演のオファーが殺到し、今の私には時間的な余裕が作れない

今でさえ1ヵ月も日本に居たのに、篤人と会えたのは3回しかない

コンサートだって本当なら最終日だけじゃなく、初日と真ん中の2日間とも篤人に会えない事はないのだけれど、やっぱり私はプロの歌手

私の東京ドームのチケットを発売した直後、たった数分で3日間のチケットは即完売となったと聞かされた

それ程までに楽しみにして下さってるファンの為に、全力で応えるのが私に出来る事だ

篤人だって、お金を払ってまで自分達のプレーを観に来てくれるファンの人に、最高のコンディションでプレーに望みたいって‥‥

私は、そんな篤人の気持ちが良く分かるし、同じ気持ちだと感じたのだ

それに昨日の帰り道、篤人は常に調子が良い訳じゃない

何か噛み合わなくて、上手くいかない時だってあるって言っていた


『だけど若い内の苦労は、金を出してでもしろって言うけど、俺は金をもらって苦労をしてるから贅沢なんよ
 それに、誰もが好きな事を仕事に出来る世の中じゃない
 なのに、自分は好きなサッカーをしてお金をもらってるんだから、それだけでも幸せなんだって思う
 こう見えても、結構苦労してるんだよ』


そんな事を口にしながら、篤人は笑っていた

苦労しない人間は居ない

輝く為には、それなりの努力はしている

そして、努力が結果に繋がる

私の場合も同じだ

私の唄う歌が人に勇気を与えたり、時には泣いたり笑ったりと、私は生きている中で、その人の人生と共に過去や未来に寄り添うよううに、歌って言うものが共有し、存在するのだと思っている

彼氏と観た映画やTV

その時に流れる曲が思い出になったり、失恋した時に耳に入って来た曲で泣いたり、失恋から立ち直る切っ掛けが曲だとか、片思いのお応援の曲や恋する女の子や男の子に力を与えたりと、人生と共に歌はあるのだと思っている

私は、そんな色んな人の人生の心の中で、いつまでも心に残る歌を唄っていきたいと思っている

だから何枚も書いては消してを繰り返し、最高の歌詞だと思ってもらえる曲を作る為に努力をしているのだ

子供の頃、将来は何になりたい?

そんな言葉に、サッカー選手と答える子供

歌手になりたいって言う子供

そんな子供達の夢を背負って、私達は舞台に立っているのだ

だからこそ、私はコンサートに集中して最高のステージをファンに披露するのが、今の私に出来る事だ

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