太陽
女子がうるさい。
隣の転入生に群がって、『前はどこに住んでいたのか?』とか、ありきたりな事を聞いてる。
そんなこと聞いたって何にもならないのに。
まぁそんな会話に聞き耳をたててる俺が言える事じゃないけど。


キーンコーンカーンコーン♪


1時間目の始まりを告げるチャイムがなって、隣にいた女子達がそれぞれの席に戻っていく。

俺も授業の準備しねぇと。

「あの…教科書、見せてくれない?」


俺が机の中から教科書を引っ張り出していると、彼女が言った。
転入したばかりでまだ教科書がないんだろう。


「いいけど。」


答えてから、素っ気なく言ってしまったことを少し後悔した。
でも彼女は気にした様子もなく、


「ありがとう。」


と言って、俺の机に自分の机をくっ付けた。

俺が教科書を出したのとほぼ同時に先生が入って来た。
そして授業が始まる。


「教科書37ページ開いて〜。」


先生が言った。
皆教科書を開く。
俺も教科書を開いた。
そこにぎっしりと書かれてる落書きたち…。

あちゃ〜…。
でも見せねぇとだよな…。
俺は教科書を彼女と俺の真ん中辺りに置いた。


「スゴい落書きだね♪」


俺の教科書を見た彼女は、そう言ってクスクスと笑った。
何だか授業中に隣の女の子と笑い合ってるなんて夢みたいだと、ふと思った。

静かに笑い合う俺たちをおいて授業は進み、いつもは長い45分が今日はやけに短く感じた。
< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop