Jewel Box


午後5時。

約束の場所まで向かう。



「橋谷さん、お待たせしました」


「いいよ、いいよ、そんな待ってないから」


さりげなくあたしの腰に腕をまわす客。


全身が身震いした。
何度やられても慣れないのだ。



阿呆な客は気付いてないようだけど。




「ゆきちゃん」


「はぁい? どうしたんですかぁ?」


「俺……ゆきちゃんとホテル行きたいな」



…………。


おいおい勘弁してくれよ。


「遅くても今週中にナンバーワンにしてあげるからさあっ!」




あたしは少し背伸びをして、客の口に人差し指をつける。



勿論、上目遣いもつけて。


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