Jewel Box
再会
週末。
新しいマンションへの引っ越しも終わり、仕事に向かおうと、玄関のドアを開いた時だった。
ガチャ。
隣のドアも開く音がしたので無条件にそちらを向いた。
「――――あ」
あの日の少年だった。
こんな夕方に何処に行くのか、ジャージを着て、テニスバッグを持っていた。
「偶然……だね。誰が引っ越してきたのかと思ったら、おねーさんだったんだ」
まさかもう一度会う事になるなんて思ってなかった。
「俺、これから夜練。おねーさんはそんな服着て何処行くの?」
「え? あー……デートかな?」
何でそんなプライベートにまで突っ込んでくるんだと思いながらも、こたえてしまったあたし。
しかも、デートってなんだ。デートって。
でも何となくキャバ嬢やってるのをばれたくなかった。