Jewel Box
「こんな美味しいオムライス初めてかも……」
率直な感想。
それほど彼の作ったオムライスは美味しかったのだ。
「マジで? ありがとー。まぁお袋が作ったオムライスが一番美味しいんだけどね」
その言葉にスプーンを動かしていた手を止めた。
お袋……か。
「おねーさんはお母さんが作る料理で何が一番好き?」
無情にも彼はあたしの心の地雷へと踏み入ってくる。
カチャリと皿にスプーンを置いてあたしは無理矢理彼に笑顔を向けた。
「あたしにお母さんはいないよ」
……うん。
あたしには母親がいないんだ。
あんなの母親じゃない。
だって母親らしい事一つもしてくれなかった。
今だって……。
「……そっか。あっ! 俺、おねーさんの卵焼き食べちゃお!」