Jewel Box
「久し振りね、雪奈」


電話の向こう側から聞こえた声はあたしが一番嫌う人の声だった。



「何」




「ちょっとお金借りようと思って。10万ぐらいあればいいから」



またか。


大体借りるって、1度も返済された記憶がない。



ほんとにこの女の脳みそはどうにかならないのかと思う。



いくら頭が腐っててもあたしの母親なのだけれど。



まぁ、かつてのこの女と同じ道を辿っている時点であたしの頭も充分いかれてるとは思うけど。



「分かった」


そう一言言い、電話を切った。



財布とバッグを手に取り、近くにあったショールを羽織る。



寝ている彼に留守番を任せてあたしはマンションをあとにした。



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