Jewel Box



あたしが何の反応を示さない事に老人は少し眉をしかめて哀しそうな顔をした。


「やっぱりこんなおいぼれと話をするなんて嫌かの……」



「え? あっ……! ごめんなさい!」


何となく、いたたまれなくなったあたしは雨が降っているにも関わらず早足で階段を降りて老人から逃げ去るようにしてアパートを後にした。




少し走って落ち着きを取り戻したあたしは今更ながらもあの老人に悪い事をしたなと少々の罪悪感に浸っていた。



傷つけちゃったかも……。


でも自分には関係ない。
そうすぐに思い直す。


所詮他人は他人。
どんなに相手が傷ついていようがあたしには関係ないのだ。



傷つくなら自分が知らない所で傷つけばいい。



あたしはそんな人間なんだ。




.
< 63 / 84 >

この作品をシェア

pagetop