Jewel Box
玄関をそのまま開けて、靴をズルズルと引きずるように歩く。


傘も挿さないで夜の街へとただ理由もなく歩く。


髪の毛は濡れるばかりだった。


ただ何も考えずに歩く。



気付けば人通りが多い所まで来ていた。



噴水の近くのベンチに座る。



あたしの頭へと降り注ぐ雨という存在が、だんだん思考を正常にさせていた。



あぁ……こんな事になるなら早く引っ越しておけばよかった。



仕事が忙しいという理由でいつまでもあのボロアパートから引っ越せないでいたのだ。



いや…お金がない頃からずっと住んでいたから何となく愛着があったのかもしれない。
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