猫又四郎の奇怪幻想見聞録
辛辣に言葉を返す夕暮れ少年に、また「よよよ」と泣き真似をするお隣さん。
それを見てまた「きもい」と少年が言ったとかグーパンしただとか……。
「おや、もう夕日が沈みそうです。あなたの帰る時間ですよ、夕暮れ少年くん」
「るっせ、お隣さんはいい加減引きこもりから脱しろよ」
「ああ眠い…」
「逃げんな」
「いえいえ、逃げていませんよ。ああそうだ。君は『死にたい』と言っていましたね。
明日、首吊り用のロープと裏購入の薬を用意しておきますよ。あ、いや。どうせなら一枚一枚君の皮を剥いでいきましょうかね」
「悪趣味」
中指をピッとたてて舌をべえっと出す夕暮れ少年に、お隣さんはニヒルに笑って別れを告げる。
「また明日、会いましょうね。最後の晩餐も用意しておきますよ」
「そりゃお前の最後の晩餐になるだろうよ。返り討ちにしてやる」
「ほんと君は、生意気です」
「黙れ引きこもり」
互いに悪態をついては背を向け、鼻を鳴らして距離をあける。
明日死ぬのはどちらか。
ああ、でも、どうでもいいか。
人間、結局最後は命を乞う醜い種族なのだから。
所詮、人は最下層の生き物なのだ。