猫又四郎の奇怪幻想見聞録
「ああそうだ。野良さん、この場所のことは……」
「大丈夫、誰にも言ってないから」
互いに苦笑し、猫又くんの淹れてくれたコーヒーを口に含む。
なんだか今日は、少ししょっぱい。
塩と砂糖を間違えたのかと思ったけど、なんだかそれを言うにも躊躇してしまう。
「今日は雨ですね……。あれ、そういえば野良さ…「ねえ、猫又くん」
猫又くんの言葉を遮り、私はずっと聞きたかったことを尋ねる。
「猫又くんって……好きな人、いる?」
「……え?」
雨音が一層激しく打った。