猫又四郎の奇怪幻想見聞録
森の中というだけあって、うっかり通りすぎてしまいそうだけど。
何故だか今の私には、その神秘的な雰囲気に惹かれ、その場所しか見えなくなっていた。
ゆっくりと重い足取りでその家に向かう。
絶対、誰かいる。
どこかそう、確信めいていた。
「すみませーん……」
可愛らしい木造ドアを開けば、ふわっとコーヒーの香りが鼻をかすめた。
ほら、誰かいるんだ。
少し心強くなって、私はもう一度声をかけた。
「あの、お邪魔しま…「誰ですか。一体、こんな時間に」
透き通るような声。
初めて聞いたような気もするけれど、昔どこかで一度だけ聞いたような……。
そう思いながら家の奥に目を向けた。