猫又四郎の奇怪幻想見聞録



野良さんが飛び出していった。傘も置いて、この土砂降りの中。



「追い掛けなくていいんですかー?」

「……っ、いつの間に」



ソファーに座って紅茶をすする愚弄人。さも当たり前にいることが、ムカつく。



「……僕が行っても、きっと傷つけてしまうでしょうから」


「やれやれ、四郎は女心がわかってないですねえ」


「あなたに言われたくない」


「それこそ、そのままソックリ四郎に返しますよ」


「っ……」


射るような視線に、ついつい目をそらしてしまった。

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