猫又四郎の奇怪幻想見聞録
とうとう黙って店を出る僕に、さっきとは打って変わってニンマリ笑う愚弄人は「いってらっしゃい」とだけ言って手を振った。
外に出れば、相変わらずの土砂降り。
傘を開いて泥道を歩けば、上からも下からもばしゃばしゃ音がする。
息も上がる程走って、立ち入り禁止区域まで見てまわって。
そうしてまた家の前まで来ると、玄関前でひとりの少女が体育座りをしてうずくまっていた。
野良さんだ。
固く口を締めたあと、僕は野良さんにゆっくりと近づいた。
「風邪、引きますよ」
「……。」
応答はなかった。