猫又四郎の奇怪幻想見聞録
うつ向いていても、声の震えが温かさを帯びていることが分かる。
「家の中に入りましょう? 新しいコーヒー、淹れますよ」
「……うん」
ゆっくりと、だけど強さを感じさせるひとつひとつの動作。
野良さんが立ち上がり僕と目を合わせる頃には、眩しい程の笑みが僕に向けられていた。
ドアノブに手を伸ばして開けば、コーヒーの匂いが鼻を掠める。
僕は管理人で傍観者
だけれど
野良さん(世界)との距離が少し
縮まった気がした