夏の日のラブソング




有無を言わせないかのような、そんな言い方。

暴君のようなそんな口調でも、彼には似合っていて。




「ありがとうございます」




素直にその気持ちを受け取ることにした。

私は、それからずっと、その海を見ていた。



そう。
此処に来た理由。

それは、もうすぐお見合いがあり、そのお見合いで婚約が決まり、結婚までの道をたどることになるだろう。

だから、その前にゆっくりとしたいと私がお祖父様たちにお願いし、一人でこの軽井沢に来させていただいたというわけだ。



一人になりたかった。
私一人で。

自由な時間が、少しでもいいから欲しかった。


ボーっとしていれば、腕にひんやりとした何かが当たる。




「…っ!」

「熱中症になるぞ、こんな所に長時間いたら」




さっきの人が、青色のラベルのスポーツ飲料のペットボトルを私に差し出してくれていた。




「わざわざすみません」

「熱中症を侮っていたら、死にいたることもあるんだ。気を付けろよ」

「はい…」




初対面の人にこんなにも気を遣わせてしまうなんて。


…それに、どうして私に構うのだろう。




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