夏の日のラブソング
したいことはたくさんあった。
将来のために、栄養の事を学びたいと思って、食物学科のある大学へ進学したかった。
だが、お祖父様に反対され、大学は有名な私立大学の文学部に行かされた。
せめてものの反抗ということで、私は社会学コースにした。
「決められた人と結婚して、跡継ぎを産んで終わりなの。きっと」
それが、この由緒正しき伝統ある名家の血筋を守るが為の使命。
「…相手が誰かも知らないのか?」
「ええ。お祖父様が教えて下さらないから」
彼は、このプライベートビーチの所有者だろう。
さすれば、…彼もきっと、私と同じ世界の人。
こんな話、するんじゃなかったわ。
暑くて、頭がきっとおかしくなってしまったのね。
「じゃあ、失礼します」
私は浅くお辞儀をして、その場を立ち去った。
―――彼が、私を見ていることなんて、知りもしなかった。