彼氏は年下副総長

ケーキばかりに気を取られて、夕飯のことをすっかり忘れていた。

緋英君は学校の授業が終わり次第、夕方の新幹線で名古屋に来てくれる。

お腹を空かせた状態でやってくるはずだ。それなのに、夕飯の支度をしていないとなると、かなりガッカリするよね。

駅まで迎えに行って、そのままどこかのレストランで食事してもいいんだけど……

ケーキだけが手作りっていうのもチグハグな気がするし……

ケーキどころの騒ぎじゃない。

なにか、得意料理を……

得意ケーキが浮かばないのに、得意料理が直ぐに浮ぶはずもない。

温かいコーヒーを飲みながら、全身の血の気が引いて冷たく青ざめて来た。

夕飯……

ケーキ……

時計を見上げると、もう、一時前だった。

夕食のメニューの相談を実家の母に聞きたいが、今、電話をすると低血圧だから、きっと機嫌が悪いだろう。

コーヒーを飲み干し、辺りに散らばったレポートの上に顔を伏せた。

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