彼氏は年下副総長

『沙耶香? 沙耶香? 聞いてる?塩よ。塩!』

携帯からの母の怒鳴り声で我に返った。

リボンを見ながら、昨日のことを思い出して、母との電話のことをすっかり忘れていた。

わたしは母からチキンの丸焼のレシピを聞いている最中だったんだ。

「え? 塩って?」

『塩よ。沖縄のサンゴ入りの塩がいいって言ってんの。ちょっと大きなスーパーならどこにでも売っているから、その塩で味付けするのよ。普通の塩より断然味が違うから。それに玉ねぎとニンニクにコショウね』

「分かった。沖縄の塩ね。それと生のチキンと玉ねぎとニンニクね」

レポートの隅に、母からのレシピを書き留めた。

『でも、沙耶香、大丈夫?ちゃんと出来る?』

心配性の母が電話口でそう訊ねてきた。

出来るよっ!と反論したかったが、そんな自信はどこにもない。

塩を振って焼くだけの料理だけど、その前にケーキの支度もしなきゃいけない。

今日のわたしは大忙しだ。緋英君がやってくる頃までに無事出来あがるのかしら?

不安になりながらもついでにケーキのことを母に聞いてみた。

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