彼氏は年下副総長

「ねえ。お母さん。わたしが作ったケーキで一番美味しかったケーキってなにか覚えてない?色々作って上げたでしょ? スポンジ系とかムース系やチーズ系とか……食べた記憶あるでしょ?」

『沙耶香が作ったケーキで美味しかったもの?』

「うん」

『焦がしたクッキーなら覚えているけど。ほら、オーブン機能で焼かなきゃいけないのに、電子レンジ機能で20分も焼いちゃって、炭になってたヤツならね。あの時、レンジから煙が出て、火災報知機が鳴っちゃって、大騒ぎしたわよね』

どうして、母親と言うものはこんなにどうでもいいことを覚えている人種なんだろう。

一瞬殺意をおぼえてしまったのは、寝起きのせいにした。

『まあ、一番おいしいと思ったのは……ドーナツかな』

「……」

ドーナツ……

丸くくり抜いた生地を油で揚げたヤツね。

完全にOBだ。

ショックのあまり手にしていたレポートを床にばらまいてしまった。
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