日々是淡々と‥
そんな思いで亜由美が選んだのが、
確かに小さいけれど特殊な技術を
持ち順調に成長していて、
『上場も近い』と当時は一応
言われていた会社だ。
家内工業に近い職場は社員の数も
70名ほどで、事務員はわずか5人、
テレビドラマに出てくるような
オシャレで広い綺麗なオフィス
とは明らかに違っていた。
それでも、人数が少ない分
色々な事を任されたし、
仕事そのものは別にイヤでは
なかった。
いや、むしろ楽しんで働いていた。
入社当時はちょうどワープロが
導入されたばかりだったのだが、
亜由美はすぐに使いこなしたし、
経理用にパソコンを取り入れる
ことを提案するとあっという間に
マスターした。亜由美自身が
思っていた以上に能力を発揮して、
社内ではかなり重宝がられる存在に
なっていたのである。
おまけに会社の業績は絶好調で、
亜由美が予想していた以上に
羽振りが良く、待遇も良かった。
入社してすぐの『新入社員歓迎会』は、
都心にある高級ホテルで行われ、
半年後に参加した『社員旅行』の
行き先は『香港』だった。
亜由美にとってはそれが生まれて
初めての海外旅行だ。
その後も、『シンガポール』、
『グアム』、『サイパン』に
連れて行ってもらった。
それに、大企業とは違って
『社長』といっても
『雲の上の人』ではなく、
身近な上司のような存在で
みんなから慕われていた。
そんな社長は、若い女子社員を
食事に連れて行くことが好き
だったので、地味な亜由美も
時々おこぼれにあずかって、
高級レストランやディスコに
行く事ができた。
そんな時は亜由美も奮発して
オシャレをして出かけた。
それで充分満足していた亜由美は、
それ以外の私生活では学生時代と
変わらず、いや、より一層出費を
押さえて節約生活を
徹底するようになっていた。
皮肉な事に、こうして亜由美が
真剣に貯蓄に励みだした頃、
社長は銀行に言われるままに
借金を増やして不動産や
株式への投資に血迷って
いたのだ。
今にして思えば、いわゆる
典型的な
『成金バブルオヤジ』だった。
確かに小さいけれど特殊な技術を
持ち順調に成長していて、
『上場も近い』と当時は一応
言われていた会社だ。
家内工業に近い職場は社員の数も
70名ほどで、事務員はわずか5人、
テレビドラマに出てくるような
オシャレで広い綺麗なオフィス
とは明らかに違っていた。
それでも、人数が少ない分
色々な事を任されたし、
仕事そのものは別にイヤでは
なかった。
いや、むしろ楽しんで働いていた。
入社当時はちょうどワープロが
導入されたばかりだったのだが、
亜由美はすぐに使いこなしたし、
経理用にパソコンを取り入れる
ことを提案するとあっという間に
マスターした。亜由美自身が
思っていた以上に能力を発揮して、
社内ではかなり重宝がられる存在に
なっていたのである。
おまけに会社の業績は絶好調で、
亜由美が予想していた以上に
羽振りが良く、待遇も良かった。
入社してすぐの『新入社員歓迎会』は、
都心にある高級ホテルで行われ、
半年後に参加した『社員旅行』の
行き先は『香港』だった。
亜由美にとってはそれが生まれて
初めての海外旅行だ。
その後も、『シンガポール』、
『グアム』、『サイパン』に
連れて行ってもらった。
それに、大企業とは違って
『社長』といっても
『雲の上の人』ではなく、
身近な上司のような存在で
みんなから慕われていた。
そんな社長は、若い女子社員を
食事に連れて行くことが好き
だったので、地味な亜由美も
時々おこぼれにあずかって、
高級レストランやディスコに
行く事ができた。
そんな時は亜由美も奮発して
オシャレをして出かけた。
それで充分満足していた亜由美は、
それ以外の私生活では学生時代と
変わらず、いや、より一層出費を
押さえて節約生活を
徹底するようになっていた。
皮肉な事に、こうして亜由美が
真剣に貯蓄に励みだした頃、
社長は銀行に言われるままに
借金を増やして不動産や
株式への投資に血迷って
いたのだ。
今にして思えば、いわゆる
典型的な
『成金バブルオヤジ』だった。