日々是淡々と‥
その結果、バブルが崩壊して4年後、
会社はあっという間に倒産して
しまったのである。

亜由美が就職してから9年が
経っていた。

 その数年前から兆候は少しずつ
見え始めてはいたものの、
『技術力での復興』を密かに
信じていた亜由美には『倒産』
という事態はかなりのショック
だった。

亜由美の会社に限らず当時は
大手企業でも大変なところは
たくさんあったのだが、
同じように働いていた多くの
同級生は何食わぬ様子で
過ごしていた。

それを知った亜由美は、
いわゆる『有名ブランド企業』を
選ばなかった自分を初めて
悔やんだのである。

幸い、失業保険と貯金があったので、
慌てて再就職先を探す必要はなく、
今度はじっくり会社を選ぼうと
亜由美は心に決めたのだった。

しかしその間に、世の中は
どんどん出口の見えない不況に
突入していた。

それが自分に連動しているか
どうかなどと想像することすら
できなかった亜由美は、
ひたすら『何がしたいのか』、
『どんな生き方をしたいのか』
などという自分探しの旅に
迷い込んでいた。

そうしてぼやぼやしているうちに、
なかなか納得のいく再就職先が
探せずに気がつくとかなり
焦り始めていた。

そんなある日、求人誌の中で
ふと目にした『キャリア・アップを
目指すあなた貴女に!』という
謳い文句に何となく魅せられて、
とりあえずのつもりで登録した
のがきっかけだった。

そして、気が付けばそのまま
派遣社員の道を、こんなにも
長く歩むことになっていたのである。
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