日々是淡々と‥
「今日のランチはお弁当持参
だったけど、帰りの買い物で‥
はぁ~2,530円か‥。
やばい‥。」

給料日までまだ十日もあるのに、
予算をオーバーしている。

財布の中には12,000円
しか残っていない。

 亜由美の年収は、300万円
程度である。
決して多くない。
いや、間違いなく少ない。

 それでも、ちまちまと倹約して
貯蓄に励んできたが、
これからの生活に対する不安は
日に日に大きくなっているのが
現状である。

 もっと、早く『正社員』に
なるべく就職活動をしておけば
よかったのだが、派遣だと
亜由美には決して縁のなかった
有名ブランド企業で働ける。

それがある意味心地よく、
ついついここまで来て
しまった。
もちろん、今まで何度も
求人情報誌は買って
調べている。


でも、その度、どうせ働くなら

『ちゃんとした会社』

で働きたいという
漠然とした思いが邪魔をして
決心できなかった。

 「やっぱ、結婚しかないかなぁ~。
真面目に考えようかなぁ~。」

 神妙な面持ちで冷蔵庫から
もう一本発泡酒を取り出し
プシュッと蓋を開けると、
数冊の預金通帳を取り出した。

 普通預金に【  578,321円】
 定期積立に【 3,602,467円】
 定期預金に【 5,123,701円】
 郵便積立に【 5,034,530円】 
 合計   【14,139,019円】

これが、派遣社員・亜由美の
ちっぽけな自尊心をどうにか
支えている。
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