日々是淡々と‥
規模がそんなに大きくないこともあり、
社内の人間関係は比較的密度が濃く、
良好なのだが、数人いる先輩の女性
管理職の中には煙たがられている人間も多い。

由香里自身、すぐにカリカリして意味のない
嫌味を言うお局達が苦手だった。

由香里は、自分が部下を持つときには
絶対にそんなヒステリーおばさんには
ならないと固く決意していた。

だからこそ、少々腹がたっても悔しくても、
とにかく感情的になることだけは避けようと
努力をしているのである。
先ほどからすでに胃がキリキリし始めて
いるにもかかわらず、できるだけ
落ち着いた様子で由香里は続けた。

「もちろん、お客様も子供じゃない
わけだから、説明してあるっていう
貴女の言い分もよくわかるわよ。
ただね、我々はそういう多少勝手な事を
言うわがままなお客様に対しても
一生懸命対応しないと、引渡しが
どんどん遅くなるでしょ?
そうならないようにするには、
なるべくこちらが動いて済むことなら
惜しまないで動かなきゃ。違うかな?」

 沙耶はぶすっとむくれた顔をして
黙っている。
 『このやろぉーっ!その巻き髪
引きちぎってやろうかっ!』

腹の中の怒りを懸命に抑えながら由香里は、

 「どう?そうじゃない?先に一言、
『私が書類を取りに伺いますが‥。』って
言ってみたら、もう少し状況が
変わらないかしら?」

 すると、ふてくされながら沙耶は、
 「私だって、もちろん必死に
やってますってば。」

『ほら、まただ。すぐに
『必死でやってます』って言う。
その程度で必死なら、私はとっくに
死んでいますぅ~。』

由香里はただ黙って聞いていた。

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