新 抱かない男の見分け方

　ではまず、“抱かない男”の分析から始めてみましょう。

　これまでもいくつかの著書で『セックスレスで幸せになれるか』というテーマを扱ってきました。もちろん世の中には「セックスレスだけれど、いつも一緒の友達カップル」「かえってセックスがないほうが楽でいい」というカップルもいます。お互いが「なくてよしっ！」という価値観なら何も問題はありません。私もそこまで口を出すわけではないのです。
　でも、でも！　どちらか一方の気持ちに合わせているというカップルだっているのです。心とは裏腹な態度。日本人の美徳とされている特徴です。奥ゆかしさ。気配り。忍耐。時として、そのよしとされている特徴が、セックスレスカップルを生みだす場合があります。
「本当は抱かれたいのだけれど、彼がセックスはなくていいって言うからしょうがないな」、あるいは「オレはしたいんだけど、彼女がエッチは好きじゃないみたい。だから我慢してるんだ」という例ですね。
　それはとっても不幸。
「セックスがなくても彼の懐の深さが好き」。そういう人もいるでしょう。でも本当に一生セックスレスでもいいの？　最初は我慢していたけれど、我慢しきれなくなっていった人を何人も何人も見てきたからそう思うのです。そのひとりにインタビューしました。
　同棲していた相手とのセックスレスに悩んだ経験のある香織さん（29歳）は、明るく聡明な印象を与えます。姿勢がよくて、セクシーな雰囲気も併せもつ彼女がセックスレスだったなんてもったいない！　思わずそう言いたくなる女性です。

「セックスが普通にあったときは、セックスの意味とかあまり意識してなかったんです。でもセックスレスになって、すごくさみしくなりました。普段の生活はうまくいっているのに、セックスがないだけで、なんでこんなに不安になるのか、落ちこみながらも考えました。そしたらわかったんです。セックスによって彼とのコミュニケーションが深まるんだって。彼を好きだという気持ちがより強くなるし、彼から愛されている実感も得られるんです」

　このように訴える女性は、たくさんいます。彼が抱いてくれないということで、女として見てもらえていないという喪失感や愛されていないという不安を感じるのです。
　その後、香織さんは彼と話しあったり、下着やネグリジェにも気を遣いました。しかし彼は変化せず。そして、とうとう別れてしまいました。

「セックスレスで悩んでいながらも、『セックスがないだけで別れるなんて本末転倒かもしれない』とも思っていました。彼もそれ以外の面では私を大切にしてくれてたし。でも、彼は私が悩んでいるのを知りながら、ちゃんと向きあってはくれなかった。一度は結婚も考えた相手でしたが、私と向きあってくれないならば、幸せな結婚生活は望めないと思いました。セックスレスだけが問題ではないんです」

　そう。“たかがセックスレス”ではありません。彼と幸せになりたいという思いで、香織さんは自分の悪いところを反省したり、女性らしさを演出したり、できる限りのことをしたのに、彼はそれに対して真剣に向きあってくれなかった。セックスレスということがきっかけで、きちんと相手に向きあわない彼の人間性が見えてしまったのです。
　セックスで得られる喜びを身体の快楽だけだと思っている方はいませんか？
それは違います。セックスは高度なコミュニケーションです。ふたりの関係性が顕著に現れるのがセックスなのです。
　セックスが面倒くさいというのは、相手との関係を深めることが面倒くさいというのと同じです。そんな相手と心身ともに高めあうおつきあいができるでしょうか。
　逆にお互いを慈しむセックスでは、相手を愛し、そして愛されているという心のつながりが生まれます。それによって心の安定が保たれ、生活自体に張りが出てきます。
　セックスをしないことで、香織さんはこの感覚を得ることができなくなってしまったんです。