ほわいと*Canvas
「テレビはなくても、家の中は
いつも音楽が溢れていて……
それだけで私には十分だったんです」
「そうなんだ。
陽香ちゃんは、おばあちゃんと音楽が
大好きなんだね。
でも、今日はどうして東京に?」
堀川さんに聞かれ、私は東京に来た理由を
話した。
「私、春から東京の音楽学校に進むことに
なって、
それで一人暮らしをするアパートを
探すために来たんです。
でも、慣れない人混みで
気分が悪くなって……」
「そこを翔が助けた、ってところかな」
「はい……」
私は堀川さんから成宮さんに視線を移し、
深く頭を下げた。
「成宮さん、本当にありがとうございました。
みなさんもご迷惑おかけして
すみませんでした。
……あの、私、帰ります」
なんとなくその場に居づらくなり、
私はドアに向かって足を進めた。