affection

汚いもの見てきたんだ。それよりも初めから綺麗なものなんて無かったのかもしれない。

あの日からあたしの心は音を立てて崩れてしまったから。


「あゆちゃん仕事入ったから準備して出来たら車乗ってねー。」

「分かりました。」


スタッフの明るい声とは裏腹にそっけなく返事を返し、車に乗り込んだ。

あえてドライバーも話しかけてはこない、その空間が楽で良かったのかもしれない。


フロントに連絡をして入ると店の常連だという、中年の男がソファーに座っていた。


「初めまして。あゆです。お時間はどうします?」

「じゃあ120分でいいよ。」


他愛もない会話をしながらも、あたしの頭はどこかに意識が飛んでいて、思い出したくもない出来事を思い出すには十分すぎるものだった。
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