最近、風紀がみだれてます (エピソード☆ゼロ)
オレと同じように感じたのか、受験生の群れが彼女の方をチラチラ見ていたが、誰も足を止めることなく進んでいく。
「結衣(ゆい)! もういいって! ほんと、危ないからやめて。落ちちゃうってば!」
なおも彼女は“落ちる”を連呼してる。
ふと気になってコータを見ると、しゃがみこんだまま固まって、呆然としてる。
顔面蒼白。
今のこいつにとって、“落ちる”って言葉は、猛毒並みに効き目がありそうだ。
なんかこのまま貧血起こしてブッ倒れそうな勢い。
まったくいい迷惑だ。
そう思って、さっきから叫んでいる女の目線の先を見る。
歩道の横には、高さ1.5メートルぐらいのレンガの塀が続いている。
この塀の向こうが柴高の敷地なのだ。
これに沿って歩いて、みんな正門に向かってるってわけ。
オレは塀の上を見上げ、その光景に目を疑った。