最近、風紀がみだれてます (エピソード☆ゼロ)
結衣がボタンを押すと、ガコンと四角い紙パックのカフェオレが取り出し口に落ちた。
「はい、どうぞ」
「ども」
受け取ろうとするオレの顔を覗き込んでくる。
「名前……まだ聞いてなかったよね?」
「ああ、うん。成林海斗」
「ふーん。成林くんか」
彼女の口から…彼女の声で…名前を呼ばれた。
そんな些細なことに、なぜかドキッとした。
「そっちは?」
なんてすっとぼけてみる。
結衣って、下の名前はもうオレの頭ん中に、完璧にインプットされてるけど。
「あたしは、小松結衣(こまつ・ゆい)。よろしくね」
そう言いながら、結衣は自分の分のジュースのボタンを押した。
いちごミルク。
ピンク色のパッケージが彼女の手の中に収まる。
それを持つ、細く白い指に、見とれてしまった。