意地悪な彼が指輪をくれる理由

瑛士の仕事は、とにかく忙しい。

アポだの接待だのと言って、今回もここへ来るまでに2回ドタキャンされている。

ミスター……じゃなくてMRはなかなか良い給料を貰っているようだが、プライベートな時間を削って稼いでいるようだ。

お嬢様だという瑛士の元彼女は、ドタキャンの続く瑛士に愛想を尽かせたのかもしれない。

約束をしている日は何日も前からワクワクするし、前日や当日は肌を磨いたり髪の手入れに力を入れたりしてコンディションを整える。

それをドタキャンされると、努力が無駄になったようで結構虚しい。

しかし、それに参っているようでは彼の恋人は務まらないということ。

好きなんだもん。

負けてたまるか。

いつでもかかってこいこの元モヤシ野郎。

「ごめんな。コロコロ予定変えて」

「別に、仕事なら仕方ないじゃん」

「真奈美、当日これからって言っても来てくれるよな」

だって好きだもん。

多少の用事よりはあんたを優先するよ。

「俺としては助かるけど、毎日ヒマなの?」

こっ……この野郎。

突然呼び出された私が、食事の途中だろうと資格の勉強中だろうといずみとお茶してようと、全部切り上げて瑛士のところに飛んでいってることも知らないで。

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