意地悪な彼が指輪をくれる理由
この年になって彼氏もいない。
焦っていないと言えば嘘になるが、好きでもない人と付き合いたくはない。
新しい出会いもない。
つまり今は瑛士以外の人なんて目に入ってこない。
それならさっさと瑛士に告白でもなんでもしてしまえばいいのだが、今はダメだ。
無闇に振られたくはない。
私たちは会う度に情はあるが愛のないセックスを繰り返している。
抱かれている間、普段は口の悪い瑛士が優しくなるから、私は幸せのあまりついつい愛されているのではないかと勘違いしそうになる。
「お前、バカじゃねーの」
「うわっ、だっせー」
「この暇人が」
いつもはこんなことばかり言う男が、その時だけは
「真奈美、可愛いよ」
「ほら、こっち向いて」
「もう我慢できない」
と、切ない顔をして甘いセリフを口に出すのだ。
2倍増しでグッとくる。
もしかしたらそれも瑛士の罠なのかもしれない。
けどそれでもいい。
私にできるのは、一人の友人として彼の傷を癒しつつ、一人の女として好いてもらえるよう自分を売り込み続けることだけ。
「ねぇ瑛士」
「ん?」
「あんた私のこと好き?」
「好き好き。大好き。愛してる」
「……あっそ」
「何だよ。せっかく告白したのに引くなよ」
そんな告白いらないよ。
私が欲しいのは本物の愛の告白なのだから。