意地悪な彼が指輪をくれる理由
朦朧とした意識の中、私は祐子さんに支えられ、彼女と共にタクシーに乗った。
大して動いてもいないのに、息は切れているし汗が止まらない。
目眩がするほどに下腹部が痛い。
まっすぐ歩くことさえまともにできない。
今日はヒールの低い靴を履いていてよかった。
この痛み、ただ事ではない。
何か大きな疾患を抱えているのだろう。
体が丈夫であることが取り柄だったのに、こんなことになるなんて。
病気に慣れていない私は、どう動けば楽になれるのかわからない。
近くの大きな病院に乗り込み、待ち時間を経て熱を測られたり問診を受けたりした。
「吐き気はありますか?」
「ないです……」
「お昼は何食べました?」
「食べてないです……」
「お小水取りますね」
「はい……」
「血液調べますね」
「はい……」
「レントゲン取りますので、この札を持って1番の扉へ行ってください」
「はい……」
「エコー見ますのでこちらへどうぞ」
「は、はい……」
今まで数えるほどしか病院にかかったことはなかったし、大きな病院には生まれて初めて来た。
大きな病院って、綺麗だし設備も充実しているけれど、人が多くて一回一回の待ち時間が長い。
検査も多い。
そんな状態に、祐子さんがキレた。
「さっきからたらい回しじゃない! もっとズバッとわかんないの?」