意地悪な彼が指輪をくれる理由

すると係のお兄さんも少しだけ目を吊り上げて言う。

「ズバッとわかれば苦労はしません。これから先生の診察です。検査結果から判断しますから、大体のことはわかります」

「大体って、ちゃんと調べなさいよ」

「ちゃんと検査しています。きちんと段階を踏まないと……」

元気のない私の代わりに、祐子さんが焦ってくれている。

私は長椅子でぐったりしながらその様子を眺めた。

でも、お願いだから、静かにして……。

「倉田さーん。倉田真奈美さーん」

スピーカーから流れたのは女性の声だった。

「はーい!」

威勢良く返事をしたのは祐子さんだ。

引きずられる勢いで診察室へ入る。

私の腹部だと思われるレントゲンを背景に見えた担当医は、私と同い年くらいの女性だった。

名札を見ると、外科医師・船越由香里(ふなこしゆかり)と書いてある。

セミロングのウェーブヘアで、バッチリメイクもキマっている。

白衣が似合う、なかなか気の強そうな女医だ。

女医は何か難しいことを喋っていたけれど、朦朧としている私にはよく聞き取れない。

その対応を祐子さんがしてくれていた。

「倉田さん、もう一回言いますね」

「は、はい……」

しまった。

ぼんやりして聞いてなかった。

女医は落ち着いた声で告げた。

「急性虫垂炎。いわゆる盲腸です」

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