意地悪な彼が指輪をくれる理由

手術までの間、病室のベッドを手配してもらったり、母の到着を待ったり、祐子さんにジェルをオフする溶剤を買ってきてもらったり。

しばらくすると、点滴のおかげで痛みが楽になってきた。

楽になったら急に色々現実が見えてくる。

入院中の仕事は?

私が休んでいる間、祐子さんとももちゃんが休まず営業するの?

ただでさえ書き込みの件で迷惑をかけたままなのに、病気までしちゃうなんて……。

申し訳ない気持ちで胸が一杯だ。

なんだかもう、情けなさ過ぎて泣けてきた。

「ちょっ、真奈美? 何泣いてんの? まだ痛む?」

突然泣き始めた私に、ネイルを落としてくれていた祐子さんが困惑の表情を見せる。

「ぐすっ……なんか、申し訳なくて……」

「病人が何言ってんのよ。店のことは心配いらないから、今は治すことだけ考えなさい」

「ありがとうございます。もし私の盲腸が祐子さんやももちゃんにうつったら、退院後にいつもの3倍働きますね」

「バカね。盲腸はうつらないでしょ」

入院は一週間程度だが、退院しても3日程度は安静にしてないといけないと言っていた。

これから10日も休むってことは、その分来月のお給料が減っちゃうよね。

ということは、ネイルサロンとか行ってる場合じゃないかも。

ていうか私、そもそも今回の入院費とか医療費、払えるの?

いくらするの?

ろくに貯蓄もしていない自分が情けなくて、また泣けてきた……。

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