意地悪な彼が指輪をくれる理由
母は瑛士の顔をジロジロ見つめ、ニコニコというよりはニヤニヤ顔で話し始める。
「あら、瑛士さんっておっしゃるの。どうもー、真奈美がいつもお世話になっておりますー」
一方で瑛士は爽やかな営業スマイルを向ける。
「初めましてお母さん。大川瑛士と申します。ご期待に沿えなくて申し訳ないのですが、僕はただの友人です」
“ただの”なんて嘘、爽やかな顔してよく言えたな。
もちろん色々やってますと言われたら困るわけだが。
「あらそうなの残念ねぇ。あ、これからってことかしら」
「ははは、それは今後のお楽しみってことで」
すっかり瑛士を気に入った母は、それからしばらく瑛士を質問攻めにした。
笑いながらちゃんと答えてくれる律儀な彼に、私の胸がきゅんとときめき、同時にお腹が痛んだ。
もうやだ。
恥ずかしいし痛いし、瑛士なんて早く帰ってよ。
……でも、初めての手術はやっぱり怖いから、その直前に瑛士の顔が見れて良かった。
悔しいけど、元気とか勇気をもらった気がする。
恋の力は偉大だ。