意地悪な彼が指輪をくれる理由
病院は静かだし、他にすることもないから、勉強をするにはとてもいい環境だ。
看護師のお姉さんが体温を計りに来たり女医が回診に来る時以外は、できるだけテキストを開くようにしている。
このペースなら、予定より早く受検ができるかもしれない。
真面目にテキストを読み込んでいると、シャッ!っとカーテンが開いた。
「真奈美、しっかりやってる?」
「お母さん! 開けるならちゃんと声かけてよ。ビックリするじゃん」
「ごめんごめん。面白いもの見つけたから、はやく真奈美に見せたくて」
母は笑顔でバッグからそれを取り出し、ベッドの横にある棚に置いた。
木製の写真立てだった。
写真立て……英語で言うと、フォトフレーム……。
あのメールの占い、バカにできないかも。
やっぱりもうしばらくは受信してみよう。
フレームに収められた写真は、私が中学生の頃の写真だった。
私と瑛士、そしていずみと碧がラケットを持って写っている。
部活の時に撮ったものらしい。
「昨日の彼、大川くんだったかしら。同じ中学校だって言ってたでしょ? 真奈美が中学生のときのアルバムを漁ってみたら、わりと簡単に出て来たから持って来たのよ」