意地悪な彼が指輪をくれる理由

「懐かしいなー。たぶん中2の頃。誰に撮ってもらったんだっけ」

少しでも目が大きく見えるよう一生懸命目を見開いている、滑稽な表情の私。

その横でまだ細長かった瑛士が、自然な顔で笑っている。

可愛いな、ちくしょう。

当時は憎たらしくて仕方なかった彼が、今となっては苦しいほどに愛おしい。

「あんたたち、随分仲良かったみたいじゃないの。あの子の写真、いっぱい出て来たわよ」

「まあ、仲は良かったよ。いつも四人でいたし」

「だったらもう15年の付き合いになるのね」

「うーん。そんな感じしないな。中学卒業してから今年の5月まで、一度も会わなかったもん」

私は中学を卒業しても瑛士と会ったり一緒に遊んだりするつもりでいた。

だけど。

「お前、いい加減気付けよ! 俺はお前がずっと好きだったんだよ。何で気付かねーの? バカじゃねーの?」

瑛士が私を好きだと言ったから、どうしていいかわからなくなった。

「あんたがそんな態度だからでしょうが! バカはそっちだっつーの!」

散々言い合いをして、ケンカ別れして、それっきり。

携帯を持ったのは高校生になってからだったからメールもできなかったし、

「元気?」

と聞くだけのために自宅に電話する勇気もなかった。

いずみの彼氏である碧に頼めば連絡を取ることもできたのだろうけれど、瑛士を振った私は、自分から彼に連絡する理由を見つけられなかったのだ。

あの頃に勇気を出して自分から連絡を取っていたら、私たちの関係は今と違っていただろうか……。

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