意地悪な彼が指輪をくれる理由

翌日の午前中、小さめのひまわりを持った祐子さんが見舞いに来てくれた。

過ちを許してくれた上に、倒れた私をここまで運び込んでくれた命の恩人だ。

神々しく見えて、病人ながら背筋が伸びる。

「思ったより元気そうじゃん」

「はい、祐子さんが連れて来てくれたおかげです」

急に入院なんてしたから、店はきっと仕事は忙しいはず。

それなのにわざわざ見舞いにまで来てくれるなんて。

迷惑ばかりかけているのに、花までもらってしまっていいのだろうか。

「お店の方は心配しないで。売り上げはぼちぼちだけど、強力な助っ人が来てくれてるから」

「助っ人?」

他店舗からのヘルプだろうか。

私も昨年、新宿店へ手伝いに行ったことがある。

「なんと、あの生意気なマネージャーが手伝ってくれてるの」

想像もしていなかった答えに、思わず力みそうになる。

「信じられない! あのマネージャーがですか?」

「そうなのよ」

木元マネージャーが売り場に立っているところを想像してみる。

スーツにメガネ、理論的で淡々とした口調。

顔は良いしスーツも似合うから一部の女子にはウケるだろうが、あんな男に売り子が務まるの……?

そう思っていたら、祐子さんが携帯で撮影した画像を見せてくれた。

画面には売り場のガラスケースを磨く、オシャレな男性が。

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