意地悪な彼が指輪をくれる理由
「これって、もしかして……」
クールビズスタイルではなく、ポロシャツにジーンズ。
メガネはかけておらず、コンタクトを装着していると思われる。
いつもは洗いっぱなしにしている髪も、ちゃんとセットされている。
「うん。木元マネージャー。こう見るとなかなかカッコイイでしょ」
「確かにカッコイイですけど、ずっと一緒にいて大丈夫ですか? 厳しいこと言われ続けてませんか?」
「それがね、全然なの。むしろ気持ち悪いくらいに優しいのよ」
つい最近まで悪口ばかり言っていたのに、祐子さんは嬉しそうに話す。
この変わり様は何なんだ。
そんなにニコニコしてしまうほど、あの生意気ドSマネージャーは優しかったのか。
目標を達成してもデレなかったのに、私が倒れたらデレるらしい。
是非とも様子を拝見したいものだが、私の代わりとして仕方なく販売員をやっているのだから、私が復活したところでお目にかかれそうにない。
……残念。
「それとね、真奈美。今日はこれを言いに来たんだけど」
祐子さんは一度椅子に座り直した。
改まられると、少し緊張する。
まさか、これを機にクビにされちゃったりして……。
あまり売り上げも良くないくせに、ブランドを汚してしまった私なんて、そうなって当然だ。
私は密かに覚悟を決め、ごくりと固唾を飲む。
回復に向かっている傷が、ズキリとした。