意地悪な彼が指輪をくれる理由
28年生きてきて、いい人とも悪い人とも関わってきた。
たぶんだけど、私は普通より悪い人と関わる経験が多かったように思う。
自分の浅はかさゆえに、浮気をされたり騙されたり。
その度に反省するけれど、簡単にはバカでお人好しな自分を変えられなかった。
「危なっかしい奴だな」
こう瑛士にも言われたし自覚はしているが、どうしようもない。
だけどそんな私にも、優しくしてくれる人がいる。
認めてくれる人がいる。
慕ってくれる人がいる。
守ってくれる人がいる。
辛いこともたくさんあったけれど、今まで生きてて良かった。
私、もっと頑張ろう。
病気や元カノなんかに負けちゃだめだ。
お腹は痛かったし、手術は怖かったけれど、今回の入院は私にたくさんのことを教えてくれた。
「祐子さん、ありがとうございます。私、仕事も勉強も恋愛も、やる気出ました」
「ええっ? 私、仕事の話しかしてないのに」
「ふふふ、祐子さんの言葉はマルチに効くんです」
「マルチって。言っとくけど私はこのまま店を続けてほしいと思ってるんだからね」
「すみません。でももし資格が取れて就職したら、初給料で何か買いますね」
「うん。寂しいけど、頑張りなさい」
店を辞めたって、就職をしたって、私はずっと祐子さんについていこう。
そう思える人がいるということは、きっと幸せなことなのだ。