意地悪な彼が指輪をくれる理由
「倉田さんの質問は、私がまだ瑛士を好きなのか、だったよね」
「まあ、とりあえずは。他にも聞きたいことはいっぱいあるけど」
女医は私の気持ちを悟った上で、ズバズバ遠慮なく話を展開していく。
私はまだ主導権を握れそうにない。
女医は診察のときのような凛々しい顔で、あっさりと告げた。
「まだ好きかどうかで言えば、間違いなく、まだ好きよ。だからあなたと瑛士が仲良くしてるの、ちょっとやだなって思ってる」
ズキンと、腹ではなく胸が痛む。
ショックと悔しさと怒りが一気に押し寄せて、どうにかなってしまいそうだ。
感情を抑えるため、私は一度深呼吸をした。
「だったら、どうして別れたのよ?」
病人ながら、良い感じにドスの効いた声が出た。
まだ瑛士が好きなのであれば、彼を傷つける理由なんてないじゃない。
落ち着いて発したつもりだが、声は少し震えてしまう。
お腹に響く。
泣きそうだ。
「それ、説明しなきゃダメ?」
私と違って、女医の声は小鳥のさえずりのように軽い。
余計に腹が立つ。
「そのためにわざわざここに来たんじゃないの?」
「それもそうね」
なんなのこの女!
「瑛士が何をしたって言うのよ」
「瑛士は何も悪くない。大好きだった。ただ……」
「ただ?」
「プロポーズされるのは避けたかったの」