意地悪な彼が指輪をくれる理由

でも、絶対に潰れるわけにはいかない。

だって、もしうちが潰れてしまったら、一体どれだけの命が救えなくなる?

どれだけの健康を守れなくなる?

どれだけの怪我を癒せなくなる?

病院を背負う私たちは、人々の元気を守るために自由を手放すの。

院長たるべき男と結婚して、子供を産み、医師へと育て上げる。

これは私が生まれたときから課せられている使命……。

瑛士との恋愛は、私の最後の恋だと思ってる。

愛されてることを実感できて、本当に幸せだった。

だけど瑛士は私を愛してるから、きっとそろそろ結婚を意識しているはず。

それをにおわせる言動もたくさん見られた。

だから……別れたの。

瑛士がプロポーズする前に。

きっと彼は前兆のない急な別れ話に驚いたと思う。

ショックだったとも思う。

彼も医療業界に携わっているからかな。

私が別れたいって言っても、しつこく理由を聞いたりはしなかった。

きっと悟ったのね。

私のちょっと特殊な「家庭の事情」を——……。




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