意地悪な彼が指輪をくれる理由
翌日、瑛士が私を訪ねて来たのは日が落ちた頃だった。
私が入院して以来、毎日顔を出してくれている。
「あんた、ヒマなの?」
私との約束は「仕事だから」という理由で延期しまくってたくせに。
「バーカ。今も仕事中だっつーの」
嬉しいけど、オシャレどころかまともに風呂にも入れない自分を見られるのは恥ずかしい。
瑛士はいつも襟がパリッとしたシャツを着てイキイキしているから、余計に。
「俺はこの病院の担当。ここにはほぼ毎日来るから、ついでだって言っただろ」
この病院の担当なんて、外れてしまえば良いのに。
女医と会ってほしくない。
嫌い合って別れたわけではない二人だから、お互いのためによろしくないと思う。
「明日で退院なんだろ?」
「うん」
「落ち着いたら、また飯行こう」
「うん」
ねえ、瑛士。
あんたはいつまで私を誘ってくれる?
いずみと碧の結婚式まで?
それとも次の女ができるまで?
大人になった瑛士の中に、私という選択肢はないのかな?
まだ先生のことが好きなの?
瑛士のことを思っているのは、先生だけじゃない。
私だって、好きなんだよ。