意地悪な彼が指輪をくれる理由
「中学の頃、いつから私のこと好きだったの?」
「は? 何だよ、急にそんな話」
「もう昔のことなんだから、話してくれたっていいじゃない」
ねえ、思い出して。
私を好きだった頃のこと。
女医のことなんて、頭から追い出して。忘れてよ。
瑛士は頭がいいからきっと容量がいっぱいあるんだろうけれど、全部私との記憶で埋め尽くしてよ。
「覚えてねーよ」
「本当に?」
「本当だって。いつの間にか」
「まあ、恋なんてそんなものよね」
私だってあんたのこと、いつの間にか好きになってたから。
「お前が言うな。兄貴に一目惚れしたくせに」
「あはは、そうだね。でも、今回はそうじゃないもん」
「今回?」
瑛士が私の顔を覗く。
しまった。口が滑った。
「真奈美、好きな人いるんだ」
「いや……、えっと」
どうしよう。
どう切り返せば良いの?
「もしかして俺、そいつとの関係邪魔してたりする?」
「そんなことない」
「そういう人がいるならちゃんと言えよ。俺、別に真奈美の恋愛を邪魔するつもりは……」
「そうじゃないんだってば!」