意地悪な彼が指輪をくれる理由
数秒の沈黙がとても重かった。
瑛士は当時の私のように、売り言葉に買い言葉で返して来たりはしなかったのだ。
「それ、マジで言ってんの?」
落ち着いた声。
もう隠したって意味がない。
「マジで言ってる。私、瑛士が好き。先生よりずっと好き」
一度口に出すと、不思議なくらい楽になった。
病気の体でこんなにも堪えていたのか。
恋は体に悪いのかもしれない。
「瑛士がまだ先生のことを気にしてるのはわかってる。でも好きになっちゃったから仕方ないじゃん。この感じ、瑛士ならわかるでしょ?」
「真奈美……俺」
「だから、私、今すぐじゃなくても瑛士の彼女になりたい。……って、思ってる」
ああ、言っちゃった。
告白、しちゃった。
好きって言いながら、また卒業の時みたいに口喧嘩になって、うやむやにできるって期待していたのに。
そんなに甘くなかったな。
そりゃそうだよね。
私たち、もう大人だし。
体の関係だってあるし。
重くなってしまうのは仕方がない。
こういう関係って、惚れた方が負けなんだってわかってる。
わかってるけど、私だって幸せになりたいから期待してしまうんだ。
俺もだよって、言ってくれることを。
「……ごめん、真奈美」